季節は巡り、別れの春。

巨大なサザエに襲われつつある今日この頃。


以前ここで春が苦手だった頃のことを書いた。
「もう、そんな風に感じることがなくなった
 大人になるということはつまらないことだ」と独りごちたが
まったくとんでもないことだった。
結局わたしはまだまだ春が苦手で、
それを感じる必要がなくなるほどの大人になってなどいないのだった。
ちいさな頃からこれはわたしにとって上手に生きる上での最大の弱点だったが
やはり簡単には克服できるものではないらしい。

5年間世話になった職場を
この春去ることになった。

この5年はわたしにとって、激動の年月だった。
父が病床に臥し、看取った。
家族や友達、大切なものたちに守られて
あっけらかんと笑いながら
その実、心に巣食った虚無と闘うのは至難の業で
疲れから来る体調不良と付き合いながら
きっとこの歳で、余生を迎えてしまったのだと思っていた。

そんなわたしが社会の一員として、なんとかぶら下がってこられたのは
この職場があったからといっても過言ではない。
心身が疲れきってしまったわたしを支え、守ってくれたこと。
いないと困るといって、必要としてくれたこと。
それらは本当に有難く、どんな言葉を尽くしても
感謝しきれるものではないと思っている。

だからこそここでできることをすべてやり終えたと思えた今
もう一度、一歩を踏み出す勇気を持てたのだと思う。

リハビリのような癒しのようなこの年月を経て
いつかいつかと口癖のようになっていた
子どもと本をつなぐことができる図書館へ。

でも、もちろんあまり肩肘張ってもいいことない。
自分らしく。
のびのびやります。


※ちなみにサザエとは、あの有名な「サザエさん症候群」のこと。
日曜の夕方、新たな一週間に気が重くなることを指すらしいけれど
今でもこの言葉、使っているのかな。

慣れ親しんだ環境から新しい場所へ移る頃
いつも別れが辛くて切なくて、
大きな石ころが胸のあたりに痞えたようで
日が差しても風が吹いても泣きたくなった。
ちいさな頃、春に襲ってくるサザエは恐怖だった。
今はそのサザエを楽しんでやろうと四苦八苦中。