人生、こんな日もあるさ。

ばしゃでおつかいに
ウィリアム・スタイグ/さく・え
せた ていじ/やく
評論社

図書館勤務をするなかで出逢った
数々のお気に入りの絵本たち。
ウィリアム・スタイグは小さな頃から大好きだったけれど
大人になって初めて読んだものも多い。
そんななかでも、大好きな一冊がこれ。

おひゃくしょうのパーマーさんは明け方早く、
やといのエベネザーじいさんと野菜を売りに市場へ。
商売は順調、家族へのみやげも買って、意気揚々と家路に着くふたり。
昼前には帰れるはずの身に次々と起こる、数々の災難。
それらをなんとか必死に回避して、ふたりは家路へと急ぐのだがー

実はパーマーさん、ぶただ。
とはいえ立派なおひゃくしょうさん。
身なりもステキだし、作る野菜を市場へ持っていけば
即完売の、優秀さ。
一方、エベネザーじいさんは、荷馬車を引くろば。
馬具を自分で身につけ、よたよたと荷物を引いて歩く。
このふたりのなんともユーモラスなこと。
嘘みたいに次々と起こる災難に立ち向かうふたりの
力強さと馬鹿がつくほどの真面目さ
そしてお互いを思いやるハートの温かさ。
それは思わず泣き笑いしたくなるくらいなのだ。
ばかばかしい、ナンセンスなお話だけれど
その奥にある、人生讃歌に思わず心が元気づく。

山ほどの不条理、災難にぶつかって回避して。
きっとその連続が、人生なのだ。
そのなかにきっと、幸せは紛れている。
ひとつひとつ歩いていくこと、そこにきっと、楽しさもある。

ウィリアム・スタイグお得意の、動物もの。
いつもそうだけれど、人間だったら嫌味になるとも限らない
ちょっと癖のあるお話を、動物にやらせることとユーモラスな絵で
何度も開きたい素晴らしい絵本に変身させる。
やはりこの作家、私は大好き。