子どもの頃のクリスマスの夜。
まず思い浮かぶのは、母のかけるレコード。
ごちそうを作りながら、ご機嫌な母はそのレコードを聴いていた。
彼女の大好きな、アンディ・ウィリアムスの歌うクリスマス・ソング。
オトナっぽくて、どきどきした。
一年で、たった一日しか我が家でかからない、大切なレコード。
それはほんの子どもの私にとっても、特別なものだった。
毎年そのレコードを聴きながら、ああ、クリスマスだ!と感じる。
ごちそうも、プレゼントも、みんなの笑顔も嬉しくてたまらない。
でもそれだけじゃなかった。
楽しくてたまらない時にはいつでも時折に訪れる、不思議な気持ち。
言葉では上手に表現できない、
好きなのか嫌いなのかわからない気持ち。
心が押しつぶされそうな、
泣きそうな気持ちが時々胸を締め付けるのだった。
長い間、その気持ちが何なのか、わからなかったけれど
今ならわかる。
幸せを噛み締めて、幸福すぎて、怖かったんだ。
正直私は、怖がりだ。
どんな場所でも慣れたらじゃじゃ馬な私だけれど
慣れるまで、最初の一歩はいつも怖い。
ちいさな頃は、それがひどかった。
長期の休みが明けた後はもちろん、日曜明けの学校でさえ
最初はとても怖かった。
好きで通う習い事でさえ。
そんな私をいつでも必ず安心させ、
一歩を踏み出させてくれた母。
今は母が私にかけてくれた言葉を思い出して
一歩を踏み出す。いつだって。
あの、ちいさな頃に感じていた
怖いほどの気持ちを感じることは、もうない。
でも、今が幸せでないわけじゃなくて
押しつぶされることがないくらい、
自分が大きくなったんだよなあと思っている。
12月は母が生まれた月。
そして父の誕生日もクリスマスも大晦日もあるこの大事な月は
ちいさな頃からずっと、お祭り気分で過ごしたものだ。
今は、ちょっとせつなくそしてもちろん、
精一杯楽しく過ごす
やっぱりとても大事な月。