バントリー夫妻が大好きでもある。

書斎の死体
アガサ・クリスティー/作
高橋豊/訳
ハヤカワ文庫

DVDをレンタルして、英国テレビドラマ「書斎の死体」を観た。
私は映像化されたポワロの大ファンだが、
このミス・マープルものはいまいちだった。。
細かいところまで描ききれていない。
難しいことなのかもしれないけれど。
それで、読みたくなって手に取った。

私にとって彼女の小説は、
いわゆる、“単なる推理もの”の域を超えている。
一般的に推理小説は、犯人探しを、
謎解きをメインに読み進めるものだ。
事件が起こり、主人公は謎を追い、
あらゆる妨害や第二、第三の事件を乗り越え犯人にたどり着く。
そのプロセスの楽しみ方は、きっと人それぞれなのだろう。
私は、小説の世界観、ディティールを思う存分楽しむ。
謎解きはプロにまかせて、こちらは隅々まで味わいたいのだ。
ミス・マープルの庭に対する情熱や、小さな村のしきたり、
古い時代の風習が色濃く残る生活。階級社会。
ポワロが放つ独特の個性とオーラ。
そして、何より、クリスティの人間の心を観察する鋭い視線。
推理小説というと、軽い読物、というイメージがあるけれど
クリスティは人間を、その恐るべき観察眼で描ききる。
その視点によって、人間の持つ恐ろしさもとことん感じるし
また、登場人物たちの持つ輝きが、暗いだけの話とは違って
その世界の魅力をいっそう引き立たせる。
私にとってのクリスティは、何度も読み返したくなる推理小説