中田が引退してしまう。
私はサッカー選手としての彼を心から応援していた。 ファンだった、と言ってもいいくらい。
鋭くクールな、それでいて安心できるプレーが好きだった。
カズをこよなく敬愛する私は、新参者の彼のことを当初
「ナマイキなやつ!!」と毛嫌いしていた。
でも、そのプレーを観るうちに、 応援しないではいられなくなってしまったのだった。
私はスポーツ観戦となると、サッカーに限らずかなり熱の入った応援をする。 ひどい騒音源となるから、周囲に迷惑をかけるだけでなく
頑張っている選手の顔がクローズアップされるだけで泣きじゃくるから
自分自身の消耗も著しく激しい。
そんな私にとって、中田の存在は、安定剤のようなものだった。
だって彼が出ているだけで、結果はどうあれ、勝てるような気がしたから。
それなのに。
今回のワールドカップ、勝てる気がしなかった。
中田が感じていた焦りやいらだち、孤独感は
彼を応援している人なら皆、どこかで感じ取っていたに違いない。
この予選リーグの間、ずっとブルーな気持ち。
ワールドカップって、本当は楽しいものじゃなかったっけ。
私は正直、しんどかった。
今思えば彼の最後の試合でさえ、直視できなかった。怖すぎて。
これから中田が何をするかはわからない。
会社を経営するナカタのことを、応援する自分はピンとこない。
サッカーをしている彼が好きだったんだ。
そんな風に愚痴りたくなるけれど、でも、またきっと
新たに颯爽と登場する彼を、応援せずにはいられないのだろう。
最後と決めたこの大会を、彼がどんな風に駆け抜けたか。
全身全霊を込めてとはこのことだ、と思う。
だからこそ、ここで幕を引く彼を潔いと思える。
この幕引きの潔さ、きっと中田じゃないとできない。